先日、高橋啓一氏(株式会社やまと代表取締役会長)の講演を聞く機会がありました。
僕は飲食店で働いているわけではないのですが、誰にとっても共通して参考になるであろう素晴らしい内容だったので、議事録として記録するとともに、この記事を読んでいただいた方に共有しようと思います。
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1.はじめに
高橋啓一氏とは・・・
高橋啓一氏は、株式会社やまとの創始者で、現在は代表取締役会長を務めています。
大学卒業後に一般企業に就職したものの、25歳で脱サラし、兄と共に会社を立ち上げました。
社是として、
一、衆知を集め和をもって尊しとする。
二、社員の成長を会社発展の基とする。
三、よい習慣は続けることに価値がある。
を掲げて、回転寿司チェーン店「すし遊館」を経営しています。
ちなみに、高橋氏自身は寿司を握ることはできないそうです。
すし遊館とは・・・
すし遊館は、岡山県に4店舗、広島県に3店舗、香川県・山口県に各1店舗の計9店舗、運営されています。
魅力はなんと言ってもまぐろへのこだわりで、愛媛県産「だてまぐろ」を1本買いし、一度も冷凍することなく各店舗へと運び、お客さんに提供されます。
また、お米にもこだわりがあり、岡山県と香川県の店舗では岡山県産「朝日米」を使用しています。
朝日米は、自然栽培によって生産されているため、安心・安全かつとても美味しいと評判です。
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2.経営改革
不採算部門の閉鎖
15年前に創業以来初めての赤字決算を出しました。
当時、すし遊間は24店舗まで拡大していましたが、高橋氏はその中で業績が良くない3分の2の店舗を閉鎖することを決め、店舗数は8店舗となります。
この積極大胆な決断は、後の成長の大きな要因の1つとなりました。
コンセプトの刷新
さらに高橋氏は、すし遊館のモットーであった「安くて旨い」を廃止します。
そして新しいコンセプトとして打ち出したのは、「安く買って安く売る」のではなく「高く買って高く売る」というものです。
その背景には大手回転寿司チェーン店の台頭があります。
安くておいしくない(まずいとは言わない)ことを売りにする営業テリトリーは既にレッドオーシャン(激戦市場)となっており、そこで戦っても勝ち目がないと判断しました。
かと言って、高級でとても美味しいを売りにするにしても、久兵衛やすきばやし次郎などがいるため到底かないません。
ではブルーオーシャン(未開拓市場)はどこだと考えた結果、「そこそこ高くてとても美味しい」というゾーンがすっぽり空いていることに気付き、そこを攻めることにしたのでした。
経営方針の転換
ある出来事をきっかけに、高橋氏が以下の経営方針を発表しました。
お客様、お取引先、スタッフの三方良しに加え
世間良しが実現して会社の存在価値が確立する
ある出来事というのは、とある年のお正月(1月2日)に起こった出来事です。
その日、お正月にも関わらずお店は営業をしていましたが、高橋氏は正月休みを取り、昼間から仲間とお酒を飲んでいました。
その時、高橋氏のところへ電話がかかってきます。
「あなたのお店はワサビをシャリの横に付けるのですか?」というお客さんからのクレームです。
1月2日は休みを希望するスタッフが多く、店内は少ないスタッフでてんやわんや状態となっており、そんな中提供した寿司がシャリの横にワサビが付いたものだったのです。
そのクレームを受けて高橋氏はハッと気付かされます。
元々、高橋氏の頭には、「売り上げを伸ばすためにはまずはCS(お客様満足)が最優先だ」という考えがあり、その方針で社員を教育してきました。
それでもこのようなクレームが起こったのは何故か?
それは、「ES(スタッフ満足)が足りていないのではないか?」ということです。
そもそも正月でも出勤する社員の数が多ければ、てんやわんや状態になることはなく、変な寿司がお客さんに提供されることはなかったはずです。
休みを取りたがる社員が多かったということは、スタッフが働いている環境に満足していなかった証拠だ、と解釈し、自らの考えを「CSの前にES!」と一新し、上記「三方良し」の経営方針を作成したのでした。
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3.経営戦略
ケンタッキーフライドチキン社の調査によると、モノが売れるために働く作用は大きく以下の4つに分けられるそうです。
モノが売れるために働く作用
- 営業力・・・40%
- 商品力・・・25%
- 価格力・・・19%
- その他・・・16%
かつて、大手回転寿司チェーン店と同価格で勝負したとき、まったく敵いませんでした。
それは何故だったかというと、「価格力」というのは売れるための要素として19%しか占めておらず、「営業力」という40%を占める力が大手回転寿司チェーン店と比べて圧倒的に劣っていたからです。
そこで高橋氏は考えます。
「営業力とは何か・・・」
営業力とは・・・
高橋氏が考える3つの営業力は以下です。
営業力とは
①接客サービスの質や提供スピード
②店舗の清潔さや居心地の良さ
③配慮の行き届いた店舗施設
高橋氏は1つずつ説明してくれました。
①接客サービスの質や提供スピード
接客サービスの質や提供スピードを高めるには「正確にホスピタリティをもって素早く行動すること」が大事だと、和倉温泉 加賀屋の小田会長が述べているそうです。
ホスピタリティとは?
ホスピタリティとは物事を心・気持ちで受け止め、
心・気持ちから行動に移すおもてなしの心
すし遊館ではお客さんからの注文を受けた際に「ハイ、喜んで!」と返事をします。
ESを高めることで、その言葉が上辺ではなく本心から出てくるようになり、それがCSに繋がると考えています。
②店舗の清潔さや居心地の良さ
日本電産・永守会長が大切にしているという6Sを高橋氏も重要視しています。
6S
整理:要るものと要らないものを区別して、要らない物を捨てる。
整頓:要るものを順序良く並べる。
清掃:即行動。
清潔:上記3Sを維持する。
しつけ:上記4Sを自ら行動する。
作法:礼儀作法=ホスピタリティ
日本電産はメーカーですが、飲食店においても非常に重要な要素です。
③配慮の行き届いた店舗施設
すし遊館は下記「3つの約束」を宣言しています。
3つの約束
- 「ようこそ、すし遊館へ」とびきりの笑顔でお出迎えします。
- 一皿一皿、真心をこめてお作りします。
- お客様の笑顔が私たちの誇りです。
高橋氏は、ESを高めることで全スタッフが上記3つの約束をきちんと守り、お客さんに満足してもらえるお店作りを目指しています。
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4.3冊の読書感想文
高橋氏は社員教育の一貫として、全社員に3冊の本を読んでもらい、その感想文の提出を求めています。
その3冊というのは、高橋氏がこれまでに読んだ本の中で特に感銘を受けた3冊です。
1冊目:ホスピタリティ サービスの原点
力石寛夫氏が書いた本です。
高橋氏がホスピタリティを学ぶ際に参考とした本です。
2冊目:掃除道
イエローハットの創業者:鍵山秀三郎氏が書いた本です。
掃除の驚くべき力を紹介しています。
3冊目:万人幸福の栞
丸山敏雄氏が書いた本です。
人生のバイブルになり得る内容です。
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まとめ
以上が株式会社やまと 代表取締役会長・高橋啓一氏の講演のざっくりとした内容でした。
個人的には、クレームをきちんと受け止め自分の反省すべき点として、会社の発展に結びつけたのは素晴らしいと感じました。
さて、、、